タロットカードにおいて、数字の「11」を冠する「11.正義(Justice)」は、宇宙的な流転を司る「運命の輪」の次に現れる、自らの行動の結果を客観的に評価し、公平な裁きを下す象徴です。アーサー・エドワード・ウェイトは、伝統的なタロットにおいて「8」であったこのカードを「11」へと変更しました。これは、彼が「力(8)」という精神的な修練を経た後にこそ、真の意味での客観的な「正義」が実現されると考えたためです。
ウェイトが描いた正義は、二つの柱の間に座り、右手に剣、左手に天秤を掲げています。彼女は世俗的な道徳や感情に流されることなく、宇宙の因果律に基づいた厳格な均衡を保っています。本記事では、ウェイトの記述を忠実に辿りながら、彼女が持つ剣と天秤の向き、そして背後の垂れ幕が意味する深遠な真実について、徹底的に調査した結果を解説していきます。
アーサー・エドワード・ウェイトが定義する「11.正義」の象徴と哲学
ウェイト版タロットにおける「正義」は、赤いローブをまとい、黄金の冠を戴いた女性が玉座に座る姿として描かれています。ウェイトは、このカードを「人間の法」を超えた「霊的な因果律」の象徴として定義しました。
「11.正義」の絵画的象徴:剣と天秤の意図
『The Pictorial Key to the Tarot』において、ウェイトは彼女が持つ二つの道具に大きな意味を置いています。右手の「剣」は垂直に立てられており、これは「峻厳」と「理性的判断」を象徴しています。彼女はこの剣を使って、曖昧なものを切り分け、真実を露わにします。
左手の「天秤」は、完璧な釣り合いを保っています。これは「慈悲」と「均衡」の象徴です。ウェイトによれば、正義とは単なる処罰ではなく、すべての要素を等しく計測し、あるべき場所に収める「調和」のプロセスです。右手の剣が「執行」を、左手の天秤が「考量」を意味しており、彼女はその両方を完全に使いこなす知性の最高峰として描かれています。
二つの柱と紫の垂れ幕:法の守護と隠された真実
彼女の背後には、教皇や女教皇のカードと同様に、二つの石柱が立っています。これは世界の二元性と、法が揺るぎない基盤の上に立っていることを示しています。柱の間に掛けられた「紫色の垂れ幕」は、精神的な権威と、その背後に隠された神聖な領域を象徴しています。
ウェイトは、この正義の女神が目隠しをしていない点に注目しました。伝統的な正義の像は先入観を排するために目隠しをしますが、ウェイトの正義は「すべてを見通す目」を持っています。彼女は表面的な事象だけでなく、その背後にある霊的な動機や真実をすべて見極めた上で、正当な判断を下すのです。
黄金の冠と四角い留め具:権威と物質的安定
彼女が戴く黄金の冠の中央には、正方形の意匠が見られます。また、赤いローブを留める胸元の留め具も四角形です。ウェイトにとって、数字の「4」や四角形は物質界の「安定」と「秩序」を象徴しています。
これは、彼女の精神的な正義が、単なる理想論ではなく、現実の物質世界において具体的な「法」や「秩序」として機能していることを示しています。彼女は天上の法を地上のルールへと正確に翻訳し、維持する役割を担っているのです。足元に見える白い靴の先は、彼女が潔白であり、常に正しい歩みをしていることを暗示しています。
アーサー・エドワード・ウェイトが説く「11.正義」の精神的因果
ウェイトは、正義を「原因と結果の法則」の象徴として描きました。彼は、人間が蒔いた種は自らが刈り取らねばならないという、避けることのできない宇宙の均衡について説いています。
「正義」の本質:誠実さと客観的な視点
ウェイトはこのカードのキーワードとして「Equity(公平)」「Rightness(正当)」「Probity(誠実)」を挙げています。ここでの正義とは、自分にとって都合が良いかどうかではなく、全体にとって正しいかどうかという客観的な視点を指しています。
彼女が司る力は、感情的な偏りを排し、事実をありのままに受け入れる力です。ウェイトによれば、正義は私たちの内なる「良心」を象徴しており、過去の行動を振り返り、現在の状況がそれに見合ったものであることを理解する姿勢を教えています。この徹底した「自己責任」の認識こそが、魂を自由にする鍵となるのです。
感情の排除と論理の勝利:赤いローブの意味
彼女がまとう鮮やかな赤いローブは、活動的なエネルギーと意志の力を象徴していますが、その表情は極めて冷徹で中立的です。これは、情熱を完全に知性のコントロール下に置いていることを示しています。
ウェイトは、このカードを「論理的な帰結」の象徴と見なしました。神聖な法の下では、いかなる情状酌量も甘えも許されません。しかし、それは冷酷さではなく、宇宙が完璧な調和を保つための「愛」の一形態であるとウェイトは表現しました。正しいことを行えば正しい結果が得られるという、予測可能な世界こそが、探求者にとっての救いとなるのだと彼は説いています。
占術における「11.正義」:決断とバランスの合図
占術的な文脈において、正義は「公正な契約」「裁判や公的手続き」「適切な判断」を強く示唆します。感情に流されず、事実に基づいて決断を下すべき時であることを示しています。
ウェイトは、このカードが「11」という数字を持つことを、10という一つの周期を超えた「新しい秩序の確立」の象徴と見なしました。自分の行動の報いを受け、バランスを取り戻すことで、人生が再び正しい軌道に乗る瞬間。それが、正義がもたらす「均衡の勝利」の瞬間なのです。
まとめ:「11.正義」が教える因果と均衡についての調査結果
今回はウェイト版タロットの重要カードである「11.正義」の象徴性と、アーサー・エドワード・ウェイトによる解釈についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
| カテゴリー | 分析フォーカス | 象徴・キーワード | ウェイトによる定義と図像の深層 |
|---|---|---|---|
| 哲学的定義 | 霊的な因果律 | 厳格な均衡 | 「11.正義」は宇宙の因果律に基づいた「公平な裁き」と、感情に左右されない厳格な均衡を象徴している |
| 因果の執行者 | 事実の直視 | ウェイトは正義を、感情を完全に排して事実を直視する「霊的な因果律の執行者」であると定義した | |
| 秩序の確立 | 数字の「11」 | 「11」は「力(8)」を経た後の精神的成熟と、知性による新しい秩序の確立を暗示する数字である | |
| 誠実さと共鳴 | 宇宙のバランス | ウェイトはこのカードを通じて、個人の誠実な生き方こそが宇宙のバランスと共鳴することを提示した | |
| 象徴と図像 | 理性的判断 | 垂直に掲げた剣 | 右手の剣は真実を見極め不正を断ち切る意志を、垂直な姿勢は法がいかなる時も妥協なく執行されることを示す |
| 慈悲と峻厳 | 天秤の釣り合い | 左手の天秤は慈悲と峻厳(厳しさ)の完璧な釣り合いを保ち、あらゆる物事を正当に計測することを表している | |
| 真実の洞察 | 目隠しのない瞳 | 目隠しをしないのは、表面的な事象の背後にある「真実」を、その冷徹な視点ですべて見通すためである | |
| 揺るぎない法 | 二つの柱と紫の幕 | 背後の二つの柱と紫の垂れ幕は、この裁き(法)が神聖な領域に根ざした揺るぎないものである証である | |
| 精神と実践 | 自己責任の原則 | 原因と結果の法則 | 正義の本質は「自己責任」にあり、自分の行動が招いた結果を正当に受け入れることが魂の調和への道となる |
| 物質世界の安定 | 黄金の冠と四角い留め具 | 黄金の冠や意匠は物質世界における安定と秩序を象徴し、理に適った正しい形が維持されることを反映している | |
| 理にかなった好転 | 契約・決着 | 占術的には公正な判断、契約の成立、未解決問題の決着など、客観的な視点に基づく好転を示唆する | |
| 偏見の排除 | 真実を計る知恵 | 私たちが偏見を捨て、感情に流されず真実の重みを正しく計るための力強い知恵を授けてくれる存在である |
以上のように、アーサー・エドワード・ウェイトが描いた「正義」は、自らの良心に従い、宇宙の法則と調和した決断を下す高潔な魂の象徴です。彼女が示す「因果と均衡」の教えを理解することは、自分の人生において誠実さを貫き、揺るぎない正解を選び取るための、大いなる指針となるでしょう。
ウェイトの思想が反映されたこのカードの深い意味を、ぜひ自分自身の判断を律し、正しい道へと導くための鏡として活用してみてください。


