受け継いだ着物や骨董市で見つけたアンティーク着物。デザインは素敵なのに、いざ羽織ってみると裄(ゆき)が足りなかったり、身丈が短くておはしょりが出なかったりといった悩みに直面することは少なくありません。
現代人は昔の人に比べて体格が向上しているため、リサイクル着物をそのまま着用するのは難しいケースが多いのが実情です。しかし、日本の伝統的な衣装である着物は、一度解いて布の状態に戻し、再度縫い合わせる「仕立て直し」を前提とした構造をしています。
この記事では、リサイクル着物を大きくするための具体的な手法や、知っておくべき注意点、そして専門業者に依頼した際の費用相場まで、知識を網羅して解説します。
リサイクル着物を仕立て直しで大きくするための基本知識と手法
リサイクル着物を自分のサイズに合わせて大きくするためには、まず「着物の構造」を理解する必要があります。洋服とは異なり、着物は直線裁ちされたパーツを組み合わせて作られており、縫い代の中に余分な布が隠されていることが一般的です。この余分な布をどれだけ活用できるかが、サイズアップの鍵を握ります。
裄(ゆき)を出すためのアプローチ
裄とは、首の付け根(背中心)から肩を通って袖口までの長さを指します。リサイクル着物で最も多い悩みが「裄が短い」という点です。これを解消するには、袖と身頃を繋いでいる部分を解き、縫い代の中に隠れている布を引き出して縫い直します。これを「裄出し」と呼びます。一般的には左右合わせて2cmから5cm程度の余裕があることが多いですが、古い着物の場合はギリギリで裁断されていることもあるため、事前に「内揚げ」の中を確認することが重要です。
身丈を伸ばす「筋消し」と「足し布」
身丈を大きくする場合、胴回りにある「内揚げ(うちあげ)」と呼ばれる余分な布を利用します。ここを解くことで着丈を伸ばせますが、長年畳まれていた着物には「折り筋」や「ヤケ(変色)」が残っていることがほとんどです。これを目立たなくさせるために「筋消し」という特殊な作業が必要になります。もし内揚げに十分な布がない場合は、帯の下に隠れる部分に別の布を継ぎ足す「足し布」という技法を用いることもあります。
身幅を広げる際の注意点
身幅(前幅・後幅)を広げるには、脇の縫い代を利用します。身幅を大きくすると、裾のラインや全体のシルエットに影響が出るため、バランスを見ながら調整しなければなりません。また、身幅を広げると必然的に「合褄(あいづま)」や「衿(えり)」の付け根の位置も変わるため、全体的な解きが必要になる場合もあります。
袖丈と袖幅の調整
振袖を訪問着に作り変える際などは袖丈を短くしますが、逆に袖丈を長くしたい場合は、袖の中に折り込まれた布があるかどうかが焦点となります。袖幅についても、裄出しと同様に肩側や袖口側の縫い代を確認します。リサイクル着物の中には、袖幅だけが極端に狭いものもあるため、現代的なバランスにするためには袖全体の作り直しが推奨されることもあります。
リサイクル着物を仕立て直しで大きくする際の費用相場と納期
着物の仕立て直しは、熟練の和裁士による手作業となるため、それなりの費用と時間が発生します。特に「大きくする」作業は、単に解いて縫うだけでなく、古い汚れのクリーニングや筋消しといった工程が加わるため、新品を仕立てるよりも手間がかかる場合があります。
洗い張りと部分直しの違い
全体的なサイズアップを希望する場合、一度すべてを解いて端縫いし、水洗いして糊を引く「洗い張り」を行うのが一般的です。洗い張りをすることで布地が蘇り、仕立て上がりが格段に綺麗になります。一方で、裄だけ、あるいは袖丈だけといった「部分直し」であれば、洗い張りをせずに作業を行うことも可能ですが、古い縫い目の跡が残るリスクを考慮しなければなりません。
項目別の費用目安
一般的な呉服店や仕立て専門店に依頼した場合の費用相場は以下の通りです。
- 裄出し:6,000円~15,000円程度
- 身丈直し(内揚げ利用):15,000円~30,000円程度
- 身幅直し:20,000円~40,000円程度
- 洗い張り(着物全体):10,000円~20,000円程度
これらに加えて、筋消し代や、裏地(胴裏・八掛)を新調する場合はその材料費が加算されます。全体を大きく作り直す「仕立て替え」の場合は、合計で5万円から10万円近くになることも珍しくありません。
納期と作業期間のシミュレーション
仕立て直しには通常、1ヶ月から3ヶ月程度の期間を要します。洗い張りを含む場合は、まず解き作業から始まり、専門の職人による洗浄、乾燥、そして和裁士による裁断・縫製というステップを踏むためです。特に成人式や結婚式などのシーズン前は混雑するため、余裕を持って半年ほど前から計画を立てるのが理想的です。
リサイクル着物を仕立て直しで大きくすることについてのまとめ
リサイクル着物を仕立て直しで大きくすることについてのまとめ
今回はリサイクル着物を仕立て直しで大きくすることについてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・リサイクル着物は縫い代の中に余分な布がある限り仕立て直しによって大きくすることが可能である
・裄を出すためには袖と身頃の接合部にある縫い代を解いて再構築する手法が一般的である
・身丈を伸ばす際は胴部分の内揚げに隠されている布の分量を確認することが不可欠である
・身幅の調整は脇の縫い代を利用するが全体のシルエットバランスを考慮して慎重に行う必要がある
・古い着物を解いた際に出てくる折り筋や変色を解消するためには筋消しという工程が重要である
・布が不足している場合には帯に隠れる位置に別の布を継ぎ足す足し布という技法が存在する
・サイズアップの作業を綺麗に仕上げるためには一度解いて水洗いする洗い張りを推奨する
・裄出しのみの部分直しであれば比較的安価で短期間の加工が可能である
・裏地が劣化している場合は仕立て直しのタイミングで新しい胴裏や八掛に交換するのが効率的である
・費用相場は部分直しで数千円から全体的な仕立て替えで数万円以上と幅がある
・納期は職人の混雑状況や作業工程にもよるが通常1ヶ月から3ヶ月程度を見込むべきである
・アンティーク着物は布地の強度が低下している場合があるため事前の状態診断が必須である
・リサイクル着物の購入時には仕立て直しを前提として縫い代の有無を店員に確認するのが望ましい
・自分の正確なマイサイズを把握しておくことで仕立て直しの具体的な指示がスムーズになる
・信頼できる和裁士や専門店に相談することで物理的な限界を見極めた最適な提案が受けられる
大切な着物を自分にぴったりのサイズに蘇らせることは、日本の伝統文化を次世代へ繋ぐ素晴らしい取り組みです。費用や期間はかかりますが、自分だけの特別な一着を手に入れる喜びは何物にも代えられません。まずは専門の業者へ相談し、愛着のある着物の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。
ご不明な点や、具体的な見積もりの取り方についてさらに詳しく知りたい場合は、いつでもお手伝いいたします。


